一九九五年二一月七日、アラン・グリーンスパン連邦準備制度理事会議長は、理事会の会議で、次のように言っている。
「歴史はこう警告する。
大規模な経済のインフラの変化、例えばすべてを電子的に行う支払いに向けた決定的シフトなどには時聞がかかる。
この変化が効率の大幅な向上をもたらしそうな場合でもそうなのである。
支払いシステムの効率向上にはさらなる費用がかかる。
特に、コンピューターや通信技術への設備投資の増加による経費である。
設備投資というものはすべてそうだが、その利益が費用を上回らなければならない。
効率の向上がいささかでももたらされるならば、である。
電子的支払いのために現在論議されている多くのアイデアを評価する際、我々は、消費者にも企業にも多くの選択肢を提供する競争市場における、さまざまな技術的環境の見地から考えるべきである。
この種のダイナミックな環境づくりこそが、経済効率の向上を常にと言っていいほどもたらしてきたのである」しかし連銀が小切手本体の里帰りを求める限り、技術の変化が経費を上回る収益を生むことはあり得ない。
イギリスのJ・メージャー政権は、長い好余曲折を経て、ようやく一八八二年の手形交換法第四五条の修正に同意した。
これによって英国の銀行は小切手の「トランケイション」をできるようになった。
その過程で行われた議論の中には、この法律の修正によって「英国はほかのほとんどのEU諸国と肩を並べることになる」というのもあった。
だが連銀は、それに大した関心を示していないのである。
連銀は小切手現物システムの強化に金を使っているが、それは連銀職員の職場がそこだからだ。
連銀の承認を得ている小切手「トランケイション」の形態の一つに画像を使ったものがある。
ハイスピードのデジタル処理で、コンピューターに、小切手上の手書きの数字の判読を求める方式である。
機械で手書き数字が読めない時は、キーボードのオペレーターの目の前の画面に小切手の引き伸ばした画像を出す。
オペレーターは自分で数字を読み取るのに慣れていて、いつもしているように、その数字を入力する。
現在でも、この作業はすべて満足できるほどにはなっておらず、画像方式を採用している銀行の〈機械の〉誤読率は二五%にも上昇している。
一九九六年に連銀は、自身のクリアリング作業を三つの巨大な画像工場に集中させた(総経費は五億ドル近い)。
ニュージャージー州のイースト・ラザフォード、ダラス、それにバージニア州リッチモンドである。
しかし、こうした計画は、銀行ではなく連銀が自身で小切手の口座番号を抜き出し、すべての情報を電子的に送る、ということにもなる。
事実、連銀は、小切手の束について行う作業にさまざまな料金を設定するシステムを打ち出した。
連銀に送る前に「きれいに区分け」し、小切手を各受け取り銀行ごとに分類する連銀の責務を軽くした銀行には、料金を安くしているのだ。
中小の銀行は、この作業を大手銀行やサービス会社に任せるようになった。
このおかげで民間のクリアリング・ハウスが増え、首都圏の大手銀行も中小銀行の支払い債権や債務をそこで決済できるので、連銀は通さなくて済む。
銀行業界の合併・買収の流行は、多くの「対外」小切手を「行内」物に変えたが、それとあいまって、中小銀行から仕事を取ろうとする競争は、小切手処理における連銀のシェアを減らした。
もし連銀が各銀行に、小切手の画像を自行にとどめ、電子的な小切手提示によるクリアリングをするよう要望したら、連銀の画像工場は全く必要なくなる。
さらに連銀に対する電子的な小切手提示についての報酬を設定したりすれば、画像化は都市の代理銀行が行うだろうから、連銀はさらにビジネスを失ってしまうだろう。
連銀にはそんなことは思いもよらないのだ。
実際、高価な画像化によって「トランケイション」が可能なのは、小切手が支払い銀行の拒否リストに載っているかどうか判断するシステム通過の最初の段階だけだろう。
I製のイメージプラス高性能取引システムに五〇〇〇万ドルかけているチェース・バンクは、普通の小切手についてはパックオフィスの読み取り・分類機を通る回数を一二回から二回に減らしたいと望んでいる。
五〇〇〇万ドルは、多分、機械としてはそんなものだろうが、システムの改良にはならない。
連銀が支払いシステムの改革を計画中の間は、小切手は依然として支払人の銀行に送られて保管され、本人の手元に戻るだろう。
下院銀行委員会の職員に連銀のオペレーション・アナリストが説明した、工場の経費支払いに充てる資金は、連銀が小切手を配達する手段として現在借りている高い飛行機の代わりに、安いトラックにすることで浮く金で賄えるのではないか。
問題の本質は、画像化がほぼ九〇%、意味がないことにある。
Eは、ここ数年、請求書にカードの持ち主が署名した伝票の「画像」を付けている。
複製可能という唯一のメリットのためだが、これにはぼく大な費用がかかっている。
というのも、画像の中の情報は、復元する場合に備えて、いずれにしろ電子的に保存しなければならないからだ。
結局、Aは現在流通しているものを、すべて電子式のものに変えた。
これは、一見、VやMカードの方式と違うように見えるが、実際は同じだ。
画像化の一〇%は意味がある。
というのは偽造の恐れがあるからだ。
実は銀行は、今ではほとんどの小切手の署名を調べていない(誰も署名を見ない境界線は五〇〇〇ドルから五万ドルで、もちろん公表はきれない)が、もし偽造小切手を受け入れてしまったら、それは銀行の損害になる。
支払人の銀行が署名を見なければ、誰かほかの人の損害になる。
この問題は実際以上に大きく見える。
高額の小切手は、電信送金が当たり前になっている商売の世界では例外になっている。
支払人の銀行が以前に受け入れたことのない小切手の金額に受け入れ上限を設けることは、難しくはないだろう。
Fedワイヤ・システムの修繕を手掛けたピーター・ヘンダーソンは一五年前に、「一万ドルを超える小切手は書くべきではない」と指摘している。
一定額を超える小切手を「例外物」として流れから抜き出すプログラムの方が、簡単でさえあるだろう。
こうした小切手の場合、署名をデジタル化して、支払い側の銀行にあるファイルの署名と、遠距離通信を使って比較できる。
現在では、小切手詐欺のほとんどはコンビニエンス・ストアなどで現金化される場合で、銀行は最終的にその小切手を現金化した貧乏な小悪党に宛て跳ね返す。
その理由は、金額が変更されていたとか、白地小切手が盗まれたから、あるいは、問題の小切手は、インクが本物の小切手に刷り込まれている磁気インクではないため、コードが読み取れない偽物である、などなど。
科学者は存在定理の重要性を言いたがる。
方程式で表せるような何かが現実の世界に実際に存在するという証明である。
小切手トランケイションや電子的小切手提示を支持する人たちの拠り所は、電子的手形捕捉と呼ばれるクレジット・カード・システムである。
これは、ほとんど儒然に誕生したものだ。
一九七〇年代初頭、クレジット・カードを発行していた銀行のいくつかが、その地区の連銀に、クレジット・カード支払い手形の処理を小切手で行うことに前向きかどうかを確かめに行った。
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